痔の手術
痔の種類
いぼ痔(痔核)
痔の中で最も多いといわれています。歯状線より上にできるのを内痔核、下にできるのを外痔核とよびます。クッションの役割を果たす内痔静脈叢や外痔静脈叢といわれる血管の集まりが、血液がたまることによって(うっ血)膨らんだり、支える組織が弱くなって肛門の外に飛び出したりします。
排便時の負担や、便秘、出産、アルコール多飲などが悪化の原因といわれています。
症状
・排便時の出血
・おしりの違和感
・イボが触れるなど
切れ痔(裂肛)
肛門の出口が切れている状態です。硬い便が通ることで、肛門の粘膜を損傷することが多いです。排便時の疼痛と、その後に続く疼痛により、次の排便を我慢することになり、かえって便秘状態を増悪させ、便が硬くなり、症状を悪化させる悪循環に陥ります。
症状
・排便時の痛み
・排便後にしばらく続く痛み
・出血など
治療
便の性状のコントロールや、座薬・内服薬で改善することが多いですが、慢性裂肛になり、肛門狭窄を認める場合には手術が必要です。
あな痔(痔瘻)
歯状線付近のくぼみ(肛門小窩)に便の中の細菌が入り込んで感染し、化膿した状態です。瘻とは、トンネルという意味です。肛門の中と外をつなぐトンネルを形成しているので、根治のためには、そのトンネルをなくす手術が必要になります。
症状
・肛門付近の腫脹と疼痛
・発熱
・膿がでるなど
内痔核に対するジオン注射療法(ALTA療法)
ALTA療法とは、硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸(ALTA)を患部に注射し、痔核へ流入する血液の量を減らし、痔核を直腸の粘膜に固定・退縮させることで、痔核の出血・脱出症状を改善させる治療法です。
定められた講習会を受講した医師のみが施行可能な手技です。
適応:脱出を伴う内痔核
メリット
- ・従来の結紮切除術に比べて、痛みや出血が少ない
- ・日帰り手術が可能
- ・治療費が軽減される
デメリット
- ・結紮切除術に比べて再発率が高い
- ・外痔核には効果がない
治療を受けられない方
- ・妊娠している、もしくは妊娠している可能性のある方
- ・授乳中の方
- ・小児(15歳未満)
- ・透析治療を受けている方
- ・嵌頓痔核の方
- ・リドカインに対して過敏症の既往のある方(リドカインを含むALTA製剤を使用する場合)
実際の治療方法
(四段階注射方法)
一箇所の痔核に対して、四箇所に薬液を分割して注射し、十分に浸透させます。
複数の痔核を認める場合には、それぞれの痔核に対しては、同様の手技を行います。
治療経過のイメージ(当院では日帰り手術ですので、細かい部分は異なります)
痔の日帰り手術Q&A
- 手術までの流れを教えて下さい。
- 肛門の状態を診察後、手術適応かどうかの判断をさせていただきます。手術が決定した場合、血液検査、胸部レントゲン、心電図など術前検査を受けていただきます。同時に、手術の流れ、手術後の受診方法など説明させていただきます。不安なことは、いつの時点でも、どのスタッフにもご相談ください。
- 初診日に手術ができますか?
- 事前に、メールでご相談いただければ対応は可能です。受診にあたっての注意事項などは連絡させていただきます。ただし、手術が必要かどうかの判断は、診察後に最終決定となります。肛門局所の状態や、全身状態によっては、初診日当日の手術とならない可能性もありえます。あくまで安全性が第一ですので、事前に確定している訳ではないことをご了承ください。
初診日に手術予定の方は、朝10時までの受診が必要になります。血液検査の結果がでるのに、少なくとも2時間前後かかります。結果を確認してからの手術になります。
イメージとしては、朝に診察があり、その後、術前検査・手術の流れの説明、昼前後に手術、夕方帰宅という流れになります。
- 麻酔方法は?背中に針をさされるのですか?寝ているうちにおわりますか?
おしっこの管は?
- 手術を受けるにあたって、一番気になるところと思います。
原則として、ALTA療法の内痔核硬化療法剤の添付文書に則ります。
事前に、鎮静薬や鎮痛薬を用いて、寝ていただいた後に、背中(硬膜外麻酔)もしくは、肛門部に局所麻酔を投与したのち、手術を行います。
ですので、寝ているうちに手術がおわります。おしっこの管も原則としていれません。
ただ、患者さんの全身状態や既往歴によっては、変更になる可能性はあります。診察時に詳しくお話をさせていただきます。
持病がある方は、現在の状態や内服薬の一覧など記載された情報提供書をご持参いただくと、流れがスムーズになります。
特に、心疾患・脳疾患などで、血をサラサラにする薬(抗血小板剤や抗凝固剤)を飲まれている場合は、内服薬中止の是非の確認が必要になることがあります。
- 手術後の通院は?
- 術後翌日から1週間以内に、診察が必要です。術後の経過を確認する上でもとても重要です。